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調子どーよ的日記風味。


by wassupbaby

満員電車

「飲んじまったから車置いてかねえとな」
ワイシャツの袖をチラリと上げると腕時計のサファイアガラスが照明を反射してキラリと光る。
「まだ一応終電間に合うぞ」
「終電か…混んでいるだろうな」
「だろーな」
アーロンは少しの間手の中でグラスを弄びながら何かを考えているようだった。
「…満員電車は嫌いでな」
「そりゃ好きなヤツもいねえだろ」
子供の我が儘のような発言にプッと笑うと、アーロンはゆるゆると首を振り、残り僅かとなっていた琥珀色の液体を喉に流し込んだ。
「俺は通勤時の満員電車が嫌で前の会社を辞めたようなものだ」
「…マジで?」
驚くジェクトにアーロンが肩をすくめて見せる。
「大袈裟に言えば、だ」
「そうか。オレは毎日満員電車でもみくちゃになりながら『こんな電車乗らねえでいい身分になってやる』て思ってたけどな」
「満員電車のお陰で頑張ったというわけか。あんたらしいな」
「単純で、か?」
恨めしげなジェクトの視線にアーロンは首を振った。
「そういう意味で言ったんじゃない。…それより、タクシーにしないか?」
「構わねえけどよ。ってぇことは、まだ帰らなくてもいいわけか」
「まあ、そういう事になるな」
相手が頷くのを確認してから空いたグラスにウィスキーを注ぐジェクトはふと何かに気付いた様子で手を止め、アーロンの耳元に顔を寄せた。
「遠回しに『帰りたくない』って誘ってんのか?」
アーロンはニッと笑う目の前の男を一瞬信じられないといった表情でまじまじと見た後、腰を上げた。
「…やはり終電で帰ろう」
「いい年して照れん…ウソウソ、冗談だっつーの」
腕を引かれ憮然とした表情で座り直すアーロンにジェクトは笑いを堪えて肩を震わせていた。


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『日曜の朝(携帯サup済SS)』設定。
ジェクトは満員電車も得意そうだけど、アーロンは殺気オーラを纏いそーだ。
二人で乗って密着すりゃいーじゃん(腐)
by wassupbaby | 2006-12-03 00:12 | 365日の一日一題